町に人魚がやってきた【7】
「何すかこの宇宙船の人体転送装置みたいなのは」
オレは思わず尋ねた。そいつは、ベッドの枕の部分に美容室のパーマ機械の巨大な奴をハイテクデザインで包んで設置した、そんな機械。この医院の外面を見て、中にこれがあると想像推定できる人は100%いない。
「3次元画像レンダリング連動オープンタイプ核磁気共鳴断層撮影装置なんだな。耳が遠くなって聴診器だけじゃ心許なくてなぁ」
「かっこいいでしょ?」
萌えボイスが言いながらスイッチオン。ランプやら数字やらズラリ点灯してイルミネーション。
「ほう、トンネルじゃなくて挟むMRIか。張り込んだなぁ。こいつは患者がうるさくないのか?総合病院のトンネルタイプは耳栓しても意味なしでいかん」
おじさんが言いながら、そのパーマ装置の下に頭を突っ込む。
「オレが聞く分には、うるさくないがな」
先生、確かご自身で耳が遠くなったと…。
てか、聴診器頼りからどえらい飛躍。
その時。
「すいません、感じるんですけど」
こざっぱりした娘の声。
え?
オレ達が声の方向に目を向けると、水槽の中からびしょ濡れ娘が半身を起こしてこちらを見ている。
人魚、気付いた。
「感じるのか?マグロじゃなかったのか?」
先生違います。
「その機械アタマ痛いんですけど」
人魚は頭痛薬のCMみたいに頭を押さえ、口から取り出した体温計でMRI装置を指さした。
オレは気付いた。
「あんた電波とか磁力とか嫌いか」
「て、言うの?これに限らず陸上機械からビンビン出てくる変なの。アタマくらくらする」
「先生、これで診なくても大丈夫じゃないすか?彼女これから出てくる電磁波に弱いんだよ」
「しかし骨折やその他の問題点が無いか把握しないと…」
「どこか痛い?」
オレは訊いた。
「いいえ」
人魚は速攻で首を左右に振った。
(つづく)
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