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町に人魚がやってきた【8】

「先生、平気そうですよ」
「そうかい?じゃぁ、まぁ、良しとするか、残念だが」
 先生ションボリ。……て、患者が「イイ」と言ったら「イイ」ってのは、医者としていいのか。
「だけどカルテだけは作りたいなぁ」
「カルテ?」
 首を傾げる人魚。さっきから話聞いてると、〝地上〟に関する知識は有ったり無かったり。
「まぁ、診察室へ来ておくれ」
「はい。あの、じゃぁここ入っていてイイですか?陸に長いこと上がってると重くて」
 無論OK。バスタブストレッチャーをみんなでガラガラ押して診察室へ。
 温水を足そうかと言ったら、嬉しいけど真水で充分というのでゴムホースで湯沸かし器。
「ゴムはいやです」
 バケツリレー。
「生でもイイですよ」
 凝った浄水器を通しているのを見ての発言。とまれバスタブにそれなりの湯水を継ぎ足し完了。
 その間に先生カルテを書き書き。体温36.2℃……いつ測った?
「ふう。なんだかいろいろお手間を取らせたようでありがとうございます」
 この辺、昨今のジャパニーズガールより言葉丁寧。麗しの身体をバスタブの中に横たえてゆっくりまばたき。それが〝お辞儀〟の代わりのようだ。確かに水中で頭下げたところで、でんぐり返って一回転。
「何か食べる?」
 萌えボイス。
「普段。何食べてるんだい」
 これはおじさん。
「わかめ、昆布、のり……」
「草食だねぇ」
「貝、タコ、イカ」
「想像付かんな」
「ウニ、魚は淡泊な方が」
「グルメだねぇ」
 で、とりあえず医院のおやつとして準備していた〝えびせん〟登場。
「これ何ですか?」
 人魚、一つつまんで一言。
 
つづく

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