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町に人魚がやってきた【13】

 先生それアプローチの順序が違うんじゃ……。
 受話器から凄い勢いの声が聞こえてくる。そりゃ町の名士がいきなり人魚だ言い出せば相手は驚いて当然……。
 じゃない。
 先生耳が遠い、イコール、ハンズフリーモードのまま耳にあてがってる、イコール、大声出しているように聞こえる。
 って、だけ。
 館長氏曰く「濡れてるのかその人魚」
「おおオレ達でタップリ濡らしたぞ。でな、その人魚ッコがな、どこに住んでたか知りたいんだとよ。延宝の頃だそうだ。その辺見繕って地図とか過去帳とか出しててくんねぇか?……30分くらいで着くよ。おう、よろしくな」
 モノスゴイ勢いでオーケーオーケー言っているのが聞こえて来る。先生はニコニコ顔で電話を切った。
「あー、今から休診だ」
「ハイ勿論。あー、なんかわくわく」
 人の病気より人魚の過去。萌えボイスが席を立ち、対しオレ達は人魚輸送準備。とりあえずバスタブに少し湯を足す。
「すいませんね。私のために」
「いや構わんよ。さてどうしたもんだかよ」
 軽トラ水槽に戻すのも手間だと話をしていたら、先生が病院の自家用救急車、すなわちドクターカーを使ってくれ、とのこと。バスタブ載せたストレッチャーを病院の裏手まで押して行き、ワンボックスの後ろにそのまま運び込む。
「先生が運転すんのか?」
「私でーす」
 挙手したのは萌えボイス。
 休診の札を出して戸締まりをし、人魚乗せた救急車と、マグロ載せた軽トラックで病院を出発。
 海沿いを走る。前行く救急車の後ろから、時々水がポタポタ落ちる。どれだけ揺れてるんだとハラハラするが、水は適度なクッションになるか。
 港市場を越え、町内唯一の信号を左折し、図書館があるのは集落挟んで山の上。すなわち、この大名行列で町の真ん中メインストリートを横切ることを要求する。しかも、そのメインストリートは狭く、クルマ一台通るのがやっと。オレがガキの頃は砂利道だった。図書館作るのをいいことに信号もろとも舗装したと聞いている。
 従って。
「あら先生どうなさったの?」
「どちらへ?誰か倒れたんかね?」
 
つづく

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