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桜井優子失踪事件【29】

【伝4】
 
・鉄と巨人の接点を求め、より古い安房の国へ
・古い遺跡を追ってどこかに迷い込んだ可能性
・安房エリアに巨人伝説は少ない
・安房は西国から大和王権の技術者集団が上陸
・王権を象徴するのが日本武尊(愛人さんが人柱)
・ミコトの剣は鉄の剣。人柱は神代以前からの風習祭祀の名残

「製鉄もよくよく見ると下総常陸の方が直接的には多いんだよね」
 登与はシャープペンシルで地図を突きながら、独り言のようにまず言って、
「蹈鞴製鉄ってのは、要するに人工的に風を起こすシステムなんだよね。だから低地の湿原だった下総でも製鉄を可能にした。でもその前は自然の風を使っていたはずで、そうなると山地の方が局地的に風の強い場所、風の通り道とか多いはずで有利。安房って風強いですか?」
 これには祖父殿が答えた。
「ええ、海に突き出した半島で脊梁山脈とでも称すべき構造を持っていますからね。風は通りやすいところを通ろうとして局所的に集められます。同じ上州空っ風のなれの果てでも、気圧配置によってあっちが強かったりこっちが強かったり。しかも黒潮のもたらす暖気が常にありますからね。空っ風の寒気とケンカして前線みたいなものが出来ることが良くあります。畑持ちには気が抜けません。ニュースで、千葉だけ雨降り、電車が風で止まってる、なんて聞いたことありませんか?」
「そういやアクアラインは風の規制多いですよね」
「それはだだっ広い東京湾の真ん中横切ってるからだけどな。ただ電車の事はラジオで良く聞くな」
 佐原龍太郎の物言いにマスターは苦笑して言った。ラジオは店のBGMで多用。
 登与は彼らの会話をうんうん頷きながら聞き、
「そうすると、人の流れも含めて安房の国にあっても変じゃないですね。そしてそれは、自然の地形をそのまま利用したはずだから、人工物の体をなしていない可能性が高い。遺跡として発見されるよりも……」
「地名、地形、地質……後は、神様をヒントにした方がいいかも、か。鉄ってそもそもそれ自体神格的存在だもんね」
 理絵子は衛星写真地図を覗き込む。それこそ巨神の手でガッと表土を掻き取られたような安房の国・房総半島南部。その形象は隣接する三浦半島との連続性を有しており、地質時代に一緒に形作られたことを物語る。文字通り神代の出来事。
 国産みの神々は二つの半島を同時に造り給い、その間を日本武尊が渡った。
 
つづく

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