桜井優子失踪事件【33】
【伝8】
しかし、電話をスライドさせたところで、桜井家の電話が先に音を立てたので、発呼を躊躇。
超感覚が反応する。これは父親だ。でも何故携帯ではなく?
祖母殿が立ち上がり電話を受け、こちらに顔を向ける。
「あの、理絵子様、お父様から」
理絵子は立ち上がり、受話器を変わった。
「ありがとうございます。……何か判った?」
『やっぱり千葉にいたか。桜井家ならおおっぴらに掛けられるからな』
なるほど。
『携帯電話の軌跡が取れた。そばに地図あるか』
「地図を」
それこそ携帯電話の通話エリアである……
基地局半径まで絞れるではないか。
『地名が判らなければ誰かに言って調べてもらえ。いいか』
父親の言った地名を繋ぐと、アクアラインから内房側を経由し安房へ向かう軌跡が描けた。
通ったと推定される高速道路・有料道路に男達がペンを走らせる。
『そこまでだ。ヒントになりそうか』
「彼女の携帯電話だけ?一緒に動いた電話機とかない?」
理絵子は訊いた。口調が性急になっていると自分でも判る。
『当然調べた。そうしたらだな。10台ほど一緒に動いている』
10台。自分の推論はハズレか。すると。
『10台は一旦八王子(はちおうじ)に集まってから、集団で移動している。高速バスかと思ったんだが、八王子からアクアライン経由千葉へ向かうような路線はない』(2009年末現在)
ならば。
「その中に彼女の元彼……名前は」
マスターの言った名を理絵子は伝えた。
『元の彼氏と一緒か。なるほど判った。調べさせよう。他には……ああ、最後に電波を拾ったのは鋸南町だ。一昨日の午前1時18分』
それは先ほど〝でーでっぽの咳〟で聞いた名前。
しかし、製鉄に関しては近代的過ぎる。
『我々もそこへ向かおうと思う。そっちはどうだ?』
「堂々巡り。ただ、元彼の可能性にたどり着いたところで父さんの電話をもらった」
(つづく)
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