町に人魚がやってきた【23】
「えーっと……2時間くらいじゃないか?」
ってオレいつから甲斐性無しだ。妻帯者なのに頼りないのが甲斐性無しだろうが。オレは独身だ。
すると管理人作実氏、なまこ持ったまま、ハタとヒザを打った。えもいわれぬ音がした。
最も、なまこ軟体動物だから大過はないのだろうが。……ちなみに飛び出したなまこの内臓は数日で再生するとか。
「おぬし甲斐性無し……」
管理人作実さん、オレの顔をまじまじ眺める。
「連呼するなよ」
「か・い・しょ・う・な・し」
「だからぁ」
「あ、かいしょうなしか」
「おお、かいしょうなしではないか」
館長、おじさん、そして闇鍋メンバーまで呪文のようにかいしょうなしカイショウナシ大合唱。
そこまで言えばオレでも判る。貝無しでなく、甲斐無しの方のカイショウナシがここにござる。
「せっぷんしろ」
ぶっ!
「おお、口ふさぐか」
館長、ヒザを打たなくてイイから。
「でも、『ちぎる』ってどうするんだ?」
おじさんが言ったところで、再び図書館のドアが開く。
「ええと遅くなりました。キッスでちぎる。結婚式ということでよろしいですか?」
牧師さん。
ちぎる=契る=ケッコン。
待てコラ。
「おおそれは名案」
「人魚ちゃんにひどいコトしなくて済むし」
「明暗分ける決断かも知れないぞ」
だじゃれで言うことか。
「どうだい人魚ちゃん」
おじさんが彼女に訊いた。
オレが思わず彼女を見ると、彼女もオレを見ている。
正直ドキッとする。流麗な巻き毛の可愛らしいお嬢さんではある。
(次回・最終回)
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