町に人魚がやってきた【最終回】
但し延宝年間の生まれ。
玉手箱よろしく、契り結んだら年齢相応とかなったりするんじゃ……。この流し目が。
「カイショウナシさんさえ良ければ」
「は……」
何だこの展開。
「私の身体に最初に触った男の人」
ありゃ担いで運んだって言うんだ。
「この胸が知っているのはあなただけです」
その姿形でムネ触らず運ぶのは困難。
「まんざらでもなさそうだなおい」
ここが学校だったらひゅーひゅー冷やかされているんだろう。
「優しくして下さりますよね」
「そりゃ……でも、何で?」
これってお見合い勧められて一発承知ってことだぞ。そりゃ昔は親の仕切りであてがわれたりしたのだろうけど。
いいのか人魚……ちゃん。
いいのかオレ。
「決めてたんです。あなたの背中で、あなたに運ばれながら、このまま陸に戻れるならば、あなたに添い遂げてもいいって」
「ごちそうさんだねぇ」
「やっちゃえ。佐久間の」
人聞きの悪い。
でも、やぶさかでない自分は何なんだ。
「単なる電器屋の跡取りだぜ」
「跡取り立派じゃないですか」
「どういうのが君の幸せになるか考えも付かないけど」
「一緒に探して行きましょう」
いいのかこれって。
「決まったかな?牧師さん、準備してくれ。戸籍はどうする」
「役所に掛け合えばどうにかなるべよ。孤児の養子縁組だって出来るんだし」
「着物着せて人魚姫だな。さぁ今度は式の準備だ。高砂つくるぞ」
一体世界のどこに拾ってきた人魚と2時間後に所帯持つ話があるんだ。
図書館のドアが開く。
「すいません町役場に行きたいんですが道をちょっと」
見慣れぬ若い女性。しかも何故かびしょ濡れ。
町に人魚がやってきた/終
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