【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【2】
(承前)
ここに、前記した鳥の性質として、縄張りのどこに何があるか位は覚える、も書きましょうか。慣れた場所でその日に限ってぶつかる、というのは考えにくい。
つまり、立て続けに、何かが起きた。
なきがらがあれば、身体に起きた異変はある程度調べられます。しかし、野生動物の遺骸が、何日も、何事もなく、残っているはずもなく。
〈君たち、つまりカラスだけ?〉
〈それは何とも……他の鳥とかどうでもいいですし〉
言われてみればその通り。でもこれだけでは情報が少なすぎます。対策以前にそもそも原因が考えつきません。不自然なので人為的とすると、例えば人間さんが駆使する〝力〟で電磁力がありますが、鳥たちは磁場で方角を感じる能力を持ちます。ですから、人間さんの強力な電磁波で方向感覚が狂って……可能性自体は考えられます。施設から電磁波が飛んでくることもあるでしょう。しかしそんな施設はこの近辺にありませんし、遠くの施設からだとすれば、その施設の周辺がただ事では済まないはず。
とりあえず調べるべきは、他の動物たちが異変の情報を持っていないか。
〈なるべく高く飛ぶようにして。当分の間は〉
私はそれだけ言いました。少なくとも、どこかにぶつかることはないはず。
ただ、自分自身、心許ない。それだけでは万全じゃないという確信があるから。
されど、カラスたちの恐怖を少しだけでも軽くする効能はあったようです。
〈あ、はい。仲間に伝えます〉
〈ごめんね大したこと出来なくて。でも、判断を下すには情報が少なすぎる。もっと調べなくちゃ〉
私はカラスたちと分かれ、他の動物たちを探すことにしました。
テレパシーを使います。誰か、近くに、いない?
その呼びかけに対して、とんでもない……いえ、リスクとして想定されるべきですが、私がそれをすっかり忘れていた、と書くべきでしょう。
慄然となるような、反応がありました。
〈お前、誰だ?何で動物に話しかけてんだ?〉
人間の男の子。
超常感覚的知覚の持ち主、つまりエスパーです。直ちに私は〝遮断〟を行います。内容は二段階、まず、彼を意識しない。これで私の意識から情報は発せられない。次いで、ペンダントにしてぶら下げている石を胸元から引き上げ……時間がないので妖精の魔法の石とだけ書きます。サファイアに似ています……これを手に握り、ある種のバリアを巡らせて彼の探索を妨害。
(つづく)
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