【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【5】
(承前)
残虐だけに陥った暴力を押しとどめる方法。
「だからって君のしていることは単なる〝いじめ〟」
私は言い、彼の頭の上から舞い降りました。
翅を使いましたが、彼には認識させません。幻を見ている、という疑念を意図して送り込みます。すなわち超能力的洗脳。
「黙れっ!」
彼は光の銃を発射してきました。当たり所が悪ければ失明する光線、一生罪の償いを要求される犯罪ですがお構いなしです。それよりも何よりも、これまでの悪事の露見が怖い。
そして、私には単純に優位に立てないとも認識しているようです。だから光線銃を使う。
対し、私以外の、普通の人間に対しては、自慢の能力でどうにでもごまかせる。
彼はそんな思いを描きながら休まず発射ボタンを押します。狙いは正確で、姿勢を様々に変え、様々な角度から私を狙って来ました。
でも私には掠りもしません。先読みして石を使って反射させているからです。
光が枯れ葉や木の枝に当たって、少々、辺りが焦げ臭くなってきました。
「まだやりますか?絶対に勝てないことは認識してる通りだよ?」
彼が小休止したタイミングで私は問いかけました。レーザ光が乱舞したのは何秒でしょうか。その間にアパートの屋上の縁、近隣の家々のアンテナ、そして電線にカラスがずらり。
カラスは仲間を守るためなら相手を厭いません。
報復という心理も持っています。
私はその旨、彼に読心させました。
「君は間違っている」
「うるさい、お前なんかに何が判る!」
されど、彼の発言は、私が彼の全てを知っているという事実への驚きから出た物。
「何のために力を得たのか吟味なさい。私は私の故に動物たちの味方をしている。そして私は、君が異なる存在だと理解し尊重する。私が理解者ではダメか?」
言葉は難しいかも知れませんが、意図は能力の故に確実に伝わるから問題はないでしょう。
〈エウリディケさん、こいつは殺し屋ですよ!?〉
非難の意も含んだカラスたちの抗議。私は血気に逸る彼らを制します。
カラスは〝仲間いじめ〟もやります。
「君は何でも判ってしまう」
「……ああ、そうだよ」
(つづく)
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