総武快速passing love ~千葉~
東京から40キロ。
境目にして分岐点。
二人はいつもそこで出会い、同じ電車で東京に向かい。
同じ電車で帰った時には、いつもそこで別れる。
ただ、二人とも、互いに相手がどこに住んでいるのか知らない。
東京湾に沿って南へ向かう。
太平洋に沿って南へ向かう。
半島を横切って犬吠へ。
そして成田を経て太古は海だった湖のほとりへ。
僕が向かうのは成田方向。だからあなたはそちらではない。
あなたはいつも階段を登り、そのまま姿が見えなくなる。
あなたがどの路線へ向かうのか、僕は時々衝動に駆られる。
もしここが分岐点ではないのなら、僕はあなたを追ったと思う。
あなたが降りる駅より向こうへ、その振りをして追ったと思う。
分岐点だったから、僕はあなたを追わなかった。それは悔やむべきだったのか。
分岐点だったから、僕はあなたを追わずに済んだ。それは幸運と呼べるのか。
分岐点であること、それが僕の分岐点。
「明日から京葉線なんだ」
僕が総武快速の中で聞いた、あなたの最後の言葉。
おめでとう。
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