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【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【8・完結】

(承前)
 
「あんたも、そんな我慢をしてるのか?」
 しゅんぺい君は尋ねました。
「……まあね」
 私は答え、そして心を閉じて独り言。
 かれこれ200年。
 ケルトのフェアリはそれなりに人々に愛され、
 そしてギリシャ神話のニンフ達には、人間さんと所帯を持った場合もあった。
 その末裔として、応じた姿形を与えられたそもそもの理由は。
 しかし。
「あんたは、ずーっとずーっと、我慢し続けなけりゃならないかもな。そんな気がする」
「予知も出来るの?」
 私は苦笑しながら訊きました。
「フッと判ることがあるんだ。あ、これはこうなるなって。知っても嬉しくないことの方が多いけど」
 
 オレもずっと一人のままの気がする。
 
 気持ちと共に届いたイメージは、闇の方へ歩くしかない自身の後ろ姿。
「だったら」
 もう一つ提案。
「え?」
「心の傷というものが君には判るはず。一人だけの気持ちも君には判るはず。そして味方が現れたと知った気持ちも、君は知ったはず」
 
 わたしの仕事は、動物や虫たちの生きる味方であり続けること。
 
 すると。
「あれ?」
 彼が言い、ハッとしたような表情を見せました。
「あんたが、今あんたが……白く光ったように見えた。……それだ!って思ったら」
 大きな変化を彼の能力は捉えたようです。
「不思議だ。嬉しくないのが消えた……あれ?妖精さんどこに?」
 
闇を齎す光/終
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