【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【7】
(承前)
〈通訳してくれ妖精さん〉
〈はいはい〉
会話の型式で書きましょう。
「お前、俺たちと友達にならないか?」
「何だって?……ってか、カラスのクセに」
〝人格〟がある上に友達に……彼としては二重の驚き。しかし、生き物が人に慣れるということは、個性の表れでもあるのです。犬猫はもちろん、爬虫類両生類。昆虫だってある程度は。
「お前が俺たちをその光で攻撃しないと約束するなら、俺たちはこの辺のゴミを漁らないよ。その代わり、他の群れの奴が入り込んできたら、俺たちに教えてくれ。お前に妖精さんと同じ能力があるなら、俺たちにはお前の心が理解できる」
「妖精だって?」
彼……しゅんぺい君……は、その事実に非常な驚きを示しました。
「何とかの精とか、おとぎに話に出てくる……」
「そう。君の持つ力こそが、そんなおとぎ話に隠された真実の証」
尋ねるしゅんぺい君に私は答えました。だからってテレパシストなら私たちの存在を知っているか、知らせて良いのか。そんなことはありません。基本、私たちは人間さんとのコミュニケーションは禁止、少なくとも、正体が判るような意思の疎通は禁止です。
なぜなら、人間さんがそんなものはいないと決めているから。私たちにそれを覆すような言動を取る権利はないのです。
「誰にでも、普通とは違うことがある。それは、普通じゃないことが出来るっていう運命からのメッセージ」
運命、と言いましたが、アカシック・レコードがどうこうという〝理論〟は私は嫌いです。生き延びようとして願い努力したにも関わらず訪れた死すらも〝決まっていたこと〟なのか。
決まっているなら、超常の能力だけでそれが見える必然性がありません。神様は命を弄んでいるのでしょうか?
「……あんたの考えてることは難しくて良く判らないけど」
しゅんぺい君は前置きして。
「あんたが、オレのことを考えてくれてるってのは判った。このカラスどもが何もしないようになれば、ってことだな」
「動物とコミュニケーションを取れる人はいますし、カラスたちは頭がいい。不自然ではないはず。ただ、君は君の力について口を噤むべき。なぜなら人にとっては不自然だから。誇示すればするほど、その不自然さの故にみんな君から離れて行く。君が君を隠すことが出来るなら……時間は掛かるけど、いつかは人々の記憶も過去に封じられるでしょう。生きて行くには長い我慢が必要なこともある、ということです」
(次回・最終回)
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