【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【6】
(承前)
彼が私に対して少し不思議な印象を持ち始めていることが判ります。自分の所業や特殊性を知った後、一方的に忌避したり非難しない相手は初めてのようです。
「お前も同じなのか?」
私も同じ立場で虐げられているのではないか、という推測。言葉遣いが尊大なのは〝何でも判る=何でも知ってる〟というよくある誤解と勘違い。
「誰にもない力を持つことは、誰にも出来ないことをしろという意味。私はそう考えて、どう使えば最も有効か考えた。生き物の端くれとして、確実に胸を張って正しいと言えるのは、命を救うことだと結論した。君はどうしたい。君の夢は、幸せと満足は何だ?」
みんなと友達になること。
誰にもない能力を持つことによって、誰にでも出来ることが彼には出来ない。
彼の心理変化にシンクロして、殺気立っていたカラスたちの認識に変化が生じます。カラスは人間に敵視されていることを知っています。ゴミを漁る性悪カラスを懲らしめてやろうと思った瞬間、逃げ去った。そんな経験はありませんか?
カラスたちは、彼から攻撃的な意図が消えたと察したのです。
そして、彼は、そんなカラスたちと同じような立場にあるとも。
「み、見るんじゃねえよ!」
心の中を覗いてくれるな……強がる彼の、ココロの弱点。唯一最大の引け目。
「覗かれる痛みが判ったかい?」
私は気付いて指摘しました。
そうそれは、彼との会話を通してたった今気付いたこと。
彼は、彼の力を、自身が傷付かないために用いていたが。
他人がどれだけ傷付くかは、意識しない。
知りたいと思うことは何でも判る。それがテレパシーなど超感覚の基本作用。
知りたいことだけ判る。
知りたくないことが判ってしまう時。それは意図して送り込まれた時。
「君は人の弱点を知り攻撃し……それで逆に友達を失った。何でも知ってるけどひとりぼっち」
そこにいるだけで疎まれる。
「やめろ……言うんじゃねぇよ……」
彼の気持ちが私には良く判ります。そこに〝いる〟だけで殺される節足動物や昆虫たち。
〈俺たちと一緒ってワケだ〉
カラスの中から1羽下りてきました。この辺りでは一番賢いオスで、4丁目のおじいさんが目の敵にしている個体です。おじいさんの付けた名前は〝はらぐろ〟。
(つづく)
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