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桜井優子失踪事件【59】

【骨4】
 
 最も、幼生など、一部の蜘蛛が二本ずつ脚をまとめ、網の中に糸で描かれた「X」の字の上にいて、Xと一体化して隠れているのを見たことがある(隠れ帯と言う)。
 しかしそれにしては大きすぎる。
 人体サイズ、否。
 二人が〝蜘蛛〟の正体を知り、思い出したのは、記紀において神武天皇が言ったとされるこの言葉。神代におけるニニギ(天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命)などの治世100万年単位。
 及び、
 神武天皇は127歳。考安天皇137歳。孝霊天皇128歳。孝元天皇116歳。開化天皇115歳……。
 その神武天皇の他、〝根子〟を諡号にもつ〝すめらみこと〟に多く見えるこの部分。
 現代社会ですら稀という以上の長寿。
 神と、人との中間的存在。……だから超感覚は〝人間〟という認識を返さなかったのだ。
 旧約聖書にも似た記述は見られる。箱船のノアは930歳。他にもエジプトなど驚異の長寿が記された伝説は多い。
 あり得ないから認めない。現代科学は言う。それは願望が生み出した想像の物語であると。
 しかし。
〈我らはあなた方の遙かなる末裔。今、時代はあなた方の足跡を失いてより1700年余〉
 理絵子はテレパシーで言い、突き上げた杖を取り下げた。1700年は志賀島(しかのしま)の金印……西暦239年を念頭に置いた。日本列島に海外と交流を持つ中央集権が存在したと確実視して良いからだ。
 それはすなわち、神代の終焉。
 
 神と呼ばれた一族……俗世を越えた超長寿命で超常の力を備えた一族の絶えた証し。
 
 縄文の人々の中に超常の力を備え超長寿命を生きた種族があり、追って混交することとなる一族が攻め立て、追い詰め、滅ぼしたのだ。有していた神の力……念動を、恐らく鉄をメインとしたであろう物理的な力と人の数が上回った。
 それと同じ事象が、この21世紀のたった今、再び現在進行形で起こっているのだ。神の領域……結界を、衛星画像とGPS、踏み荒らすことを躊躇しない暴力が引き裂いた。
 この時のシンクロ感を理絵子は忘れない。
 
(つづく)

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