グッバイ・レッド・ブリック・ロード-12-
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「いえいえ、この度は私の不肖な弟子がお手間を。しかしまぁ……」
窯主川俣は、仰臥する男性を腕組みして見つめ、ため息をついた。
あきれかえっているという表情である。明らかにこの老男性と、伏している男性との間には、認識の齟齬がある。
「医者を呼んだのかね?」
川俣は女性と同じく、布団の傍ら、ソフラチュールのパッケージを捉えて言った。
「いいえ、このお嬢さん看護婦さんなんです。ストレス、睡眠不足、栄養不良とのことです」
「それはそれは。重ね重ね申し訳ない……。まぁ、確かにこいつに今必要なのは睡眠だな。今のままでは、やればやるほど悪化して行くばかりだ」
その言葉に、女性がギョッとした表情を見せる。
「先生、それでは集合展に……」
「心配するな、だから出て行けなどとは言わぬ。ハッパがけ……こら、客人に聞かせることか。余計なことを軽々に……これは失礼。まぁ、ゆっくりなさっていって下さい」
窯主川俣は言い、しかし女性の方に一瞬じろっと睨むような視線を向けると、場を立ち、引き戸より奥へ下がった。
「ありがとうございます」
レムリアはその背に向かって言った。
お茶を一口頂き、男性の様子を見る。脈拍は落ち着いている。また、我慢を重ねている人は、寝ている間に異常なほどの力で歯を食いしばっていることが良くあるが(歯ぎしりはその延長)、それも感じられない。
「複雑な事情が、おありのようですね」
レムリアは女性を見ず尋ねた。首を突っ込むというか、それがあの真由という少女に影を落としているのでは、と思ったまで。子どもの立場からすれば、大人に振り回されて傷つけられるなんざ、たまったものではない。
「真由ちゃんはこの人の連れ子なんです」
女性は、レムリアが思わず振り仰ぐようなことを、いきなり言った。
(つづく)
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