グッバイ・レッド・ブリック・ロード-14-
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「え?買い物なら私が……」
「いえ、その間にお父様がお目覚めになったらあれですし」
レムリアは心の中で目を剥いた。
私がひとりいてどうするのだ。何を頓狂な。
この麻子という女性、軽いんじゃなくて少しずれてるのでは……思ったが口にはしない。
「あ、そう。……それなら」
麻子に、散歩道をこう行ってこう行くと自販機が、と判りづらい説明を受け、千円札を渡される。
……まぁ最悪、あのお店が並んでいた近辺に何かあろう。
「じゃぁちょっと」
「気をつけて。……それであのもし、真由ちゃん見つけたら、おやつ用意してるから」
「判りました」
外に出、目を閉じ、真由の“思い”を探す。高地に行って視界が開けるように、“雰囲気を感じ取れる範囲”が、ぱーっと広がって行く。
イメージが浮かぶ。無人の公園でブランコに腰を下ろし、しかし遊ぶでなく、ナチュラルに揺れながら、地面の方をぼんやり見つめる寂しげな少女。
そのイメージが強くなる方向、散歩道を高台の方へと向かって歩く。途中発見した自販機でスポーツドリンクと、もう一本ペットボトルを購入する。観光客らとすれ違いながら、散歩道の順路を逆行し、新しい店が並ぶ場所から小道に入り、散歩道より外れの方へ外れの方へ。
コンクリートの階段を上がると、滑り台とブランコだけの公園に、真由は置かれた人形のように座っていた。
レムリアに気付き、少女の顔から一転、母猫のように警戒の目を向け、次いでその目が怒りの色を帯びる。
「まだいたのかよ」
「ごめん、全部事情を聞いちゃってね。そのまま去るのは失礼だし」
「大体なんだよお前」
「お父様が倒れられた時、通りがかった看護婦」
「看護婦ぅ?ふざけんなよ。お前幾つだよ」
レムリアはペットボトルを真由の隣のブランコに置き、IDを取り出し、彼女に見せた。
「European free will medical care mission」
(つづく)
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