グッバイ・レッド・ブリック・ロード-16-
3
階段を上がって来る4人。
真由が着ているのと同じ、ブレザーの制服を着た女子生徒。互いに顔を見ながら喋っているが、下卑た印象があり、友達にしよう、という感じではない。一人は棒付きのあめ玉を持ち、口の中に出したり入れたり。
「……逃げろよ」
真由が呟くように言った。その声音に感じる萎縮。
顎を引き、唇を固く噛み締め、拳をぎゅっと握る。目の挙動が落ち着かない。
その動作で、レムリアは逆に、自分は絶対にここから逃げてはならない、と自分に命じた。
判った、のだ。
真由の手を熱く握る。
対し真由の手は冷たい。レムリアをハッとした表情で見つめる。
4人が彼女らに気付いた。向けられた目線に真由の手がびくりと震える。
「お~真由ちゃん」
その表情と口調で、レムリアが思い出したのは、
……難民キャンプに食料をたかりに来る、自称“聖戦士”の男ども。
「行けよ」
真由はレムリアの手を振り払うように言ったが。
「断る」
レムリアは逆にいっそう、手を強く握り、どころか引き据えた。
「でもこいつらは……」
「あなたを傷つける存在。ひとり対集団で、執拗に。だから私はあなたを絶対にひとりにしない」
レムリアは真由の目を見ず言った。判っているから見ずに言った。
すなわち。
“いじめ”
しかしその言葉を、レムリアは敢えて使わなかった。わざわざこの状態で再認識させる必要はないからだ。
それは尚いっそう、彼女を傷つける。
真由の身体が、僅かに震えるのが、握った手を通して伝わる。
「なんでそれを……」
「筋肉の緊張、体温の低下、血圧の上昇」
レムリアは答える。テレパシーを行使するまでもない。
身体の位置を変える。真由に向いた4人の視線を遮るように、間に割って入る。
4人を目線で迎える。彼女らの背後に西日があるため表情はよく見えない。だが、嫌悪感を抱く目の色をしているのが、印象的なほどよく判る。目は口ほどに……とはよく言った物だ。
(つづく)
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