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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-18-

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 さりとてそれがノーならどうやって防御。使える物は左手のIDカードと、右手に持ったスポーツドリンクのペットボトル。
 水入りボトルは充分な質量があり、“使える”と聞いたことがある。凍っていれば凶器になり、推理ドラマの殺人トリックで常道なのは知られる通り。
 その時。
 うーいーうーいーと耳を聾する大音響が至近で鳴り響いた。
 防犯ブザーである。家並みにこだまし、小道の間に響き渡る。
 何事かと思う家人もあろう。小窓が開いて目線も幾つか。
「ちくしょう!」
「行くぞ」
 4人がバタバタと逃げて行く。
 ブザーの出所……レムリアは振り返って知った。真由が携帯電話内蔵の防犯ブザーを起動したのだ。
 電話の電池を一旦外し、ブザーをオフ。
「ばか、無茶しやがって……」
 真由は下を向き、電話をいじりながらぼそっと言った。
 電池を再セットし、睨むような目をレムリアに向ける。
 怒って……否。
 その目に涙。荒れた口調と裏腹の、西日に輝く金色の涙。
「お前が……お前がやられたら、どうするつもりだったんだよ!」
 ブランコから立ち上がり、レムリアにしがみついてわんわん泣き出す。小柄なレムリアに比して彼女の方が背が高い。レムリアは上半身を抱え込まれるように抱きつかれた。
 まるで迷子の孤児(みなしご)のよう……レムリアのまず抱いた感想はそれ。真由は今まで誰にも話さず、誰にも気付かれず、一人で、あの4人と戦ってきたということ。
 荒い口調は精一杯の強がり。きつい表情も、寄せ付けまいとする雰囲気も。
 本当の真由はそんな娘ではないのだ。ただ、麻子に関しては、父を奪った“敵”に相談など出来ない、“弱い”ところなど見せられない。それに値する器にあらずという認識もあるだろう。
 
(つづく)

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