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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-20-

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 レムリアは真っ直ぐに真由を見た。
 真由の表情が変わってくる。テレビやマンガの世界、半分インチキ。そんなキーワードで語られる物が、たった今、眼前に、現実として立ち現れたことに対する、驚愕と畏怖。
「私が偽名を使うのはこれのせい。私がそういう者と知る人はこの国にたった一人。あなたが信じてくれるならば二人目」
 真由は声も出ない。当然であろう。超自然的な能力・現象は、超自然的であるがゆえに、今まさに目の前に見せられたとしても、にわかに信じられる物ではない。
 レムリアは真由の目を見、少し笑みを浮かべ、風に髪を任せ、彼女の結論を急かさず待った。なお、お断りしておくが、彼女の役どころは本来、友人や親、カウンセラーが“絶対の安全とこれ以上の暴力停止を保証する”という形でなされるべきものである。もちろんレムリアは決して超自然能力で安直に解決することを目してはおらず、従い当然、その能力で4人に手を加えることもない。
 ちなみにレムリアは、忽ちの対処として必要なのは眼前の暴力回避であり、そのための能力を自分は有し、ゆえに頼ってもらって良い……そういう意図を持ってカミングアウトした。
 信じてもらえるかどうかは問題ではないのだ。この問題で火急的に大事なのは、絶対的な味方がいるぞ、という意思表示であり、その信頼を得ることだ。私はカウンセラーだ、相談所の者だ、と言うのと同じである。
 真由が、高度を下げ始めた陽光に、目線をずらした。
「その、“たった一人”ってどんな人物?」
 真由が尋ねる。
「電気エンジニアの卵。お兄ちゃんみたいな存在。でも、私のことを愛してると公言して憚らない人」
 レムリアは陽光を背にハッキリと発音した。
 14の娘が口にするには、極めて大人びた台詞であると承知している。しかし言い切る必要性を感じたからそう言った。
 
(つづく)

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