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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-22-

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「……本気で言ってるのか?」
 真由の問いにレムリアは頷いた。
 そして。
「私と同じ目に遭うのは、私一人でたくさんだから」
「え……」
 真由は目を見開いた。
「じゃぁお前も……」
「国の事情で、生まれついてある種の特権があった。放っておいても将来が約束されている……反感のるつぼの中に私は放り込まれた。いたたまれなくて飛び出した。そして、だからこそ私は、誰かのために生きている、という存在であろうと決めた。……だから、だから、あなたの気持ちは、判る。息が詰まるくらい判る」
 涙が出てくるのをレムリアは感じる。思い出したくもないが仕方がない。記憶は関連する内容によって呼び出されるように出来ている。
 ただその代わり、自分の涙が、真由を激しく揺さぶっていることも認識している。
「今の私には、安心できる居場所と、自分を認めてくれる絶対の存在がいる。あなたと私はスタート時点の立場は一緒。であるならば、私で可能なことは当然あなたでも可能だと私は信じる。
 私は、あなたの、力になりたい」
 風に顔を振り払って真っ直ぐに真由を見る。涙はもういい。
「お前……」
 真由の声が震える。
「自分のために、泣いて……」
「私を信じてくれるその人は、私を守る盾となり、私のために骨折し、更には大怪我を負い、その後私が怪我をしたら……その結果、私の身体の中には、その人の血が流れている」
 レムリアは自らの胸元に手のひらを当てた。端的には輸血を受けたのである。詳細は略する。
「それに比べれば私の涙なんか」
「安っぽい同情なら、口にした人間はいたけどね」
 真由は下を向き、ブランコに乗って、揺れた。
「生意気に見えたらしいんだ。英語の発音。よそ者のくせにってね」
「外国語や数学は苦手なのが普通だもんね」
「で、その下敷きには、親父がニート状態とバレた、ってのがあるわけよ。バカな担任が喋っちゃってさ。その時うろたえた態度を取った自分も悪いのかも知れないけど」
 
(つづく)

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