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2010年9月25日 (土)

グッバイ・レッド・ブリック・ロード-25-

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「あいつに母親面なんか……」
「判った。じゃぁ黙っておきましょう。でもお父様にはご了解を得ないと。学校から問い合わせが来た時に、お父様自身の答えがない」
「親父か……」
 真由は空を見上げてため息をついた。
 その所作は、“頼りにならん”という意味であろう。今の彼女の父親は、彼女の理想とズレているのだ。
 ズレの背後に、脱サラや麻子の存在があることは言うまでもあるまい。なお、彼女は当然、父親にも心を開いていないと見て良い。自分の経験上、娘のピンチを知った父親というのは、我が身そのものを盾とした野獣だからだ。
「いっそのこと姿消す?」
 レムリアは提案した。父親に言うのも乗り気でないならそれしかない。
「お前のセリフっていちいち突拍子もないな」
 真由は苦笑。レムリアは微笑み返しで、
「偽名を操る怪しい少女ですので。普通の女の子とは少々異なる選択肢もご用意できますのですよ」
「オランダ行くのか?」
「とは、限らない」
「なんだそりゃ」
「密かな家出をするなら、警察が尋ねそうなところは避ける必要がございます。どこかに隠れるの類はその点で最悪。スパイはいつまでも同じ場所にはいません」
「……なんかマジでアニメかマンガの世界になってきたな」
「その方面では私のようなのが現れたら、ヒロインは幸せになって大団円というのが予定調和」
 レムリアは笑って見せた。
 真由は力が抜けたようにフッと笑った。
「イマイチ信じられないけど……絵空事の割には具体的すぎるし……とりあえずお前のおかげで気が楽になったのは確かだよ。ありがとう」
「よかった!」
 ならまずは結構なことである。レムリアは両の手を合わせてパチンと鳴らした。
 これは安堵や納得の際に彼女が良く見せる仕草である。その動作が可愛く見えたか、それとも幼く見えたか、真由は少し驚いた風な、しかし柔らかな表情を見せた。
 
(つづく)

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