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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-26-

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 当座の問題は回避した。レムリアは判断した。しかしそれは、この後長いであろう解決への道の第一歩に過ぎない。
「一旦帰らない?探しに来られるのもまたちょっと、でしょ?こういうのは平静を装わないと悟られる」
 レムリアは言った。知ってもらう必要があるのに、隠すような行動を取るのは不思議というか妙だが、物事タイミングが肝心、その点で今は時期尚早。親の方が対応出来る状況とは思えない。
「そうだな」
 二人は歩き出した。 
 


 
 工房に戻ると、布団の主は、半身を起こして娘達を迎えた。
「遅くなりまして」
 レムリアはスポーツドリンク、及びドラッグストアの袋を片手に、布団の傍らへ。
 一方真由は一言も発せず、陶芸家が出入りしたのと同じ引き戸から奥へ。
「あ、真由ちゃ……」
 呼びかけようとする麻子。レムリアはその肩に手を載せ制した。
「彼女と少し話し込みました。今は一人に」
「え?」
 問い返す麻子。レムリアは肩を持った手に力を込める。
「そう……。うん、判った」
 制止の理由が“女の子同士の間の合意に基づく”……さすがの麻子も悟ったようだ。
 その間、主は布団でスポーツドリンクをぐびぐび煽り、飲み干した。まるで知らぬ存ぜぬと言ったそぶり。
「お嬢さん」
 空いた容器のキャップを閉めながら、レムリアを呼ぶ。
「はい」
「その、私の作品を見て頂けたとか」
 小さな笑顔。
 ああこりゃだめだ……父の発言にレムリアが抱いた感想がそれ。
 同時に真由の失望を理解する。そして思い出した言葉がこれ。
『“おたく”っては、のめり込むと周りへの気配りが出来なくなって礼節を欠くし、自分がどう見られていようと気にしない。だから他人には失礼に映るし、所作はキモくなる。生来独りよがりの人は尚ひどい』
 
(つづく)

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