グッバイ・レッド・ブリック・ロード-27-
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……これはその唯一の理解者。東京の知り合いが、自らを“おたく”と公言しての自己分析である。
この父親の心理状態はこれに近いのだとレムリアは理解した。陶芸……更に言うとその集合展示会……であろう、出品作品の出来映えについて師匠の合格をもらう。ただその一点のみに必死なのだ。
畢竟、子供のことには疎くなり、その発言は口先ばかりの“おざなりのなおざり”になりやすい。すなわち生返事と一緒であって、子供は当然、その発言の底浅さにすぐ気付く。結果出来上がるのは“こんな親父”というレッテルと、伴う子供社会における“あんな親父”という引け目の意識。
要するに“恥ずかしい父親”“こんなのお父さんじゃない”という認識が、真由を無意識に萎縮させているのだ。見知らぬ土地で唯一の身内、本来存在すべき“信じられる存在”が、この体たらくではさもあろう。なおここで、一般に“いじめ”の端緒として、“弱そう或いは自信なさそうに思えた”、が多いことに注意されたい。そして、彼女は彼女なりにその諸悪の根源が麻子にあると断じ、引きはがそうと爪を立てたわけだ。
父親が父親、真由も真由。そしてこの麻子なる女性も、自身が真由に関わろうとするほど、彼女の反発を強めることに気付いていない。大体、“引き剥がす”宣言に対し、理解してもらうという発言をしていない辺り、事態の深刻さに対する自覚がないことを意味する。裏を返せば子供の心理を理解しておらず、その理由のひとつには、“子育て未経験”があるのだろう。……きついもの言いではあるが。
で、麻子のしていることはとどのつまり、下手に出てご機嫌を取ろうという、やはりうわべだけの行動だ。真由と和解するのではなく、既成事実を積み重ねればやがて納得せざるを得ないだろう……という腹づもりなのであろうか。いや、ひょっとしたらヘタなドラマみたいに無意識裡に張り合っている?
(つづく)
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