グッバイ・レッド・ブリック・ロード-28-
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「最悪ですね」
かくてレムリアは、父親の問いに対し稲妻の一撃を見舞い、額のソフラチュールを一瞬の躊躇も無くベリッと引っぺがした。
「あうっ!」
痛そうに額を抑える父親の手をのけ、帰りがけにドラッグストアで買ってきた、保湿タイプ絆創膏に張り替える。多少の再出血を認めるが大したことはないし、それは言ってみればソフラチュールの“副作用”。余談になるが、実はソフラチュールというのは、封を切ってすぐは、傷に当てる面が“ぷるぷる・ぺたぺた”しており、患部に優しく接触する。しかし、だからって貼ったままにしておくと、ベリッと剥がれたことで判るように、乾いてガリガリになり、ガーゼの繊維が傷口の組織にからみつく。このため、剥がす時にムチャクチャ痛いという困った性質を持つ。
だったら、保湿タイプ絆創膏の業務用を最初から持ち歩けば良い。となるのだが、ボランティアしてるからと厚意で分けてもらっている身には、高価な保湿シートを下さいとはとても言えないのである。なお、彼女のウェストポーチの中には、この他に包帯と三角巾、“マキロン”、サロメチールあたりが応急処置アイテムとして入れてある。
残ったソフラチュールをゴムバンドで封じ、ポーチに戻す。
「な……」
果たして、突拍子もないほど辛辣な台詞に、不倫の二人は瞠目して絶句した。
絶句ついでにイカズチもう一つ。
「私、工房で直売頂けるなら購入しようと思っておりましたが、見せて頂いたのがあなた様の最高の作品だというなら、失礼ながらお断り致します。買うどころか、札束付けてもらってくれと言われてもイヤです」
さぁどう出る。怒る?それとも落胆する?
ちなみに、レムリアは“ダメ男はつっぱねて鍛えろ”と、その東京の知り合いの母親から伝授?教育?されている。それを発揮した故は、書いたような状況から、諸悪の根源父親にありと判断したため。お前が自信を持って立派な作品を製作し、あわよくばこの工房の跡継ぎとして認められでもすれば、全員が心理的に立脚できる屋台骨が建つのだ。
(つづく)
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