グッバイ・レッド・ブリック・ロード-7-
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女性が布団を掛け直す。
「ええ、まぁ、その、なかなか先生に認めて頂けてないようで……。あ、ごめんなさい。私ったらお礼もせずに。その、助かりましたありがとうございます。でも……その失礼ですけど、なんでそんな専門的な……お若いのに……」
女性は彼女の傍らに置いてある、一見湿布を思わせる白っぽいパッケージに目をやった。
ソフラチュール。ガーゼに“硫酸フラジオマイシン”を染みこませた物。傷口からの感染予防に応急処置的に用いる。言ってみれば高級なバンソウコウ。
彼女はそれを、自らのウェストポーチから取り出し、カットして男性の額に貼ったのだ。どう見ても市販品に見えず、従ってこういう質問になる。
「申し遅れましたこういう者です」
彼女は同じくポーチをゴソゴソしてIDカードを取り出す。
カードに貼ってある写真の彼女は、ナースキャップをかぶっている。
「……看護婦さん。で、えーと、これは」
「メディア・ボレアリス・アルフェラッツ(Media Borealis Alpheratz)と申します」
「外国の方?」
「ええ」
「あら。全然そんな風には……ご両親がこちらに?それとも帰化されて……」
「いえ、祖先の出自が東アジアなのでこういう顔をしているだけで」
「へぇ~。変な言い方だけど、あなた、そのまんまでこんなド平日にぶらぶらしていたら、補導されそうよ」
面白がるような薄い笑みを浮かべて言う。病人の前でその態度ってどうか?とも思うが、想定外の話に相違ないので、強い興味を持って当然といえば当然か。なお、女性の発言は、彼女の顔立ちも、言葉遣いも、その辺の子供と変わらないね、という意味と解釈すれば良さそうだ。彼女の年齢は14歳と数日。
女性が立ち上がる。
(つづく)
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