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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-9-

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 真由と呼ばれた制服の少女は、女性の言葉を荒い声で遮った。乱暴と言うよりは、喋らせもしない、声も聞きたくない。そんな気配。
 対し女性は少女を“さん”付けで呼んだ。それは、子供の反発を恐れる親が良くやる間違い。
 この二人が、ぎすぎすした関係であることは、書くまでもあるまい。
「いきなりごめんなさい」
 レムリアはまず柔らかく言った。
「通りががったら……お父様かしら?倒れられたので」
 しかし真由は、レムリアを無視するが如く、目線を外し、何も言わず部屋に上がると、最前まで女性が座っていた男性の傍ら、布団の向こう側に座った。
「用が済んだら出て行けよ」
 レムリアを睥睨。さながら野良犬を追い払うよう。ただ、拒否したところで例えばすぐ暴力に訴えるという感じではない。子持ちの母猫のように相手を近づけたくないだけであり、もちろん初対面から生理的に嫌い、という物とも違う。
 従って当然、レムリアは動かない。
「真由さん!」
 さすがに女性が叱咤。
「うるせぇな!元々てめぇが……」
 言い争いになるかと思ったその矢先、布団の男性が苦悶の声を上げた。
「あっ……」
「大丈夫、悪夢を見ているだけ。……ストレスのせい」
 心配そうな表情の真由を制し、レムリアは男性の手首を取って脈を診る。ちなみに真由は、レムリアがこうして父に触れても、手を出さないし罵詈も口にしない。心底寄りつくなという意味ではやはりない。
 敵か味方か探っている……そんなところか。
 レムリアは腕時計を見ながら拍動を数える。早い。伴い呼吸も早く、そして浅い。
 男性が寝言を言う。まゆ、まゆ、行かないでくれ、父さんを見捨てないでくれ……。
 真由の表情から怒りの炎が消失し、親を想う女の子のそれに変わる。
 
(つづく)

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