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総武快速passing love ~津田沼~

~津田沼~
 
 デートコースの定番は映画館とか遊園地。
「今回は私に任せてくれない?」
 電車に乗るかと思いきや、君は僕の手を取り改札に背を向ける。
 ショッピングビルが並ぶ駅前の人波を縫って向かったのは、〝日本最大級の手づくりホビー材料大型専門店〟。
 一見デパートのようだが、中身は上から下までそういう売り場。
 店の前で君は立ち止まり、くるりとつむじ風のように身を翻して僕を見た。
 こんなデートは変ですか?……いいやそうは思わないよ。
 君は笑顔で中に入る。
 そこは女の子が手先でちまちま……そのために用意された小さな宇宙。
 男の多い一角も少し。
 鉄道模型にプラモデル。
 でも、精密なミニチュアも、君に言わすと女の子のお人形遊びと変わらないとか。
 そして君が買ったのは書道用品。
 それと、ビーズが少しにテグス一巻き。
 地味だった君に声を掛けたのはいつだったか。
 教室の隅でひとり本を読む君を見つめるようになったのはいつ頃だったか。
 君がやがて視線を返して。
 その視線に笑顔が伴って。
 行き帰りが同じ道なこと。
 案外近いところに住んでいること。
 そして、思いに気付いた。
 思いを口にした僕に、可愛くもないし何の取り柄もないけれど、と、君は言ったね。
 チョコパフェでも食べようか。
 
←稲毛船橋→

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