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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-34-

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 真由が唖然とし、目と口をあんぐりと開く。
「とか思ったんですが」
 レムリアは老師の目を見た。
「これは参ったなぁ」
 老師は白髪の頭部をポリポリ掻いて苦笑した。
「私が語るもおこがましいが、常滑の本来はこの壷のような、大型で本当に実用的な入れ物の製造にあった。お経を収める3本の横筋が入った三筋壷(さんきんこ)という壷……まぁ形はこいつに似ているかな?があるが、これは殆ど常滑の独壇場でな。九州から東北地方にまで流通していたことが判っている。その点でこのお嬢さんの言う要するに機能美が評価されていた、ということだろう。である以上、時代が下り、凝った装飾やら芸術性が求められるようになっても、常滑は常滑であって良いし、それにはそこを外すべきではないはず。それこそお嬢さんの言う“本質”が失われてはならない。その点で真由ちゃん、君のお父さんは、名工の作品の持つそうした流転原点をふまえての結果と言うより、上っ面の形態色合いばかりを見過ぎの傾向があるのだよ」
「……お前、親父の作品を一見しただけでそれだけのことを?」
 レムリアは首を横に振った。
「お父様は川俣先生のOKを得よう。そこに意識が向きすぎていて、結果として、見てきた作品のコピーを無意識に作ってしまっている。“良い”と言われるモノと同じものを作れば、“良い”と思ってもらえるという、ちょっと幼い情動なんだけれど、せっぱ詰まった心理状態がそうさせている、と思ったわけ。そしてそういう行動に出てしまう根本は、パッと見の“綺麗さ”に囚われている証拠。
 だから……実はこれを伝えに来たんだけど、少しの間陶工から離れてみては?って。そしたら、空港にエビフライ食べに行こうっておっしゃったから真由ちゃん呼びに来たの」
 
(つづく)

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