グッバイ・レッド・ブリック・ロード-39-
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両手を挙げてしまうほど驚いた、と言うことか。
「それはお父様が、あなたのことを、“親の言うことを聞くべき子供”じゃなく、大事なひとりの家族、人間として再認識したってことでしょ。お気付きになったんだよ。振り回されたあなたが深く傷ついていることに。ようやく、ではあるけどね」
「……なるほど」
「で、どうにかしなきゃ、諸悪ことの始めは自分の勝手わがままだから、ケリを付けなきゃって思ったんじゃないのかな」
「でも、それって私にあいつを受け入れろってことだろ?」
真由はフーにうつむかせ、“がっかり”させた。
「そうじゃないかもよ?」
レムリアは言ってみた。今しがた父親が口を開いた時もそうだが、麻子に関して、真由の反応はいつもそこに向かい、直ちに激しく拒絶する。その自己確立を乱すがゆえに。このため、そもそもまともに話が始まらないのだ。
「そうじゃない?そうじゃないってことは……」
果たして、真由は違った反応を見せた。
が、それ以上、そこで話すことは出来なかった。
エビフライの順番が回ってきたのではない。幼い泣き声が二人の耳を捉えたからだ。
「mother, mother, where?」
しゃくり上げながら、涙ボロボロの顔で、ショップを右往左往する金髪碧眼の男の子。
以下日本語で記述する。カッコ書きは、英語より訳したことを示す。
「(どうしたのボク?)」
真由が問うた。碧眼の男の子は弾けるゴムのように真由を見、
「(お母さんがいなくなっちゃった。おかあさんが)」
迷子である。この男の子が、行き交う誰からも声を掛けられなかった。というより、誰も声を掛けることができなかった、と容易に想像が付く。
言葉の壁のゆえに。
「どうしようか。空港のスタッフに。……でも引き渡して、じゃあそゆことで、ってのもなぁ」
(つづく)
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