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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-41-

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「男の子の名前はジョージ」
 レムリアは伝える。真由が確認を取り、その通りと判明する。
 頃合い。
「(最後の大手品。ワン・ツー・スリー)」
 レムリアが指をパチンと鳴らし、指差すように、人だかりに向け手を伸ばす。すると、人だかりは何か出すとでも思ったか、さっと左右に別れた。
 その向こう、眼鏡を掛け、涙でぐしゃぐしゃの欧州系の女性。
「ママ!」
「(ずいぶん探したのよ!)」
 泣きながら抱き合う親子。その姿に拍手がわき起こり、二人は群衆に会釈。問いかける人には、男の子が迷子だったので……と説明。
「お前すげーな」
 真由が言い、次いで母親が男の子を抱き上げ、二人の元へ。
「(二人に遊んでもらったと聞きました。親切にどうも)」
「(いいえ、お気を付けて良い旅を。はいボクどうぞ)」
 レムリアは消したビスケットを今度は袋詰めにして出現させ、男の子に持たせた。
「サンキュー!」
 男の子が手を振り、母親と去って行く。
 余興終わり。二人は男の子に手を振って見送った。その様子に、集まっていた人々も自然解散。
 残った男性が一名。
 真由の父親。
 人だかりの中心が自分の娘達と知ったか、あっけにとられたように少女二人を見つめる。
「……その、そろそろだが」
「あ、はい、行きます」
 父親の後について、エスカレータで上のフロアへ。
「何が行われ……」
「ああこの子すごいよ。魔法みたいな手品をする」
 真由が弾む声で説明する。
「……英語が初めて役に立った。今までろくな事なかったのに」
 真由は言葉尻にそう付け足した。
「そうか」
 しかし父親はこう言っただけ。……男性は一般に女性の“それとなく・思わせぶり”な系統の発言に対して鈍感である。“これなら判るだろう”と女性が思ったことでも、男性側はカケラも理解していないことが多い。ただもちろん、レムリアは真由のわずかな心理の変化にしっかり気付いている。
 
(つづく)

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