グッバイ・レッド・ブリック・ロード-43-
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そこにはミサンガ。
レムリアは真由の手首に結びつける。……レムリアの取っている行動や動作が、いちいち“女の子っぽい”ことに、注意すべきであるかも知れない。
「おそろい」
レムリアは自分の手首に巻いたミサンガを彼女に見せた。
「いつの間……もういいよ。訊かねー」
真由は怒ったように膨れて、ぷいっと顔を背けた。もちろんふざけて、である。
男の子がレムリアを見て笑う。ミニカーを自分の腕に走らせる。
「……どこに行っても、いつ行っても、傷ついているのは子供達」
レムリアは、楽しそうな男の子を見ながら言った。
「え?」
「戦乱、疫病、天変地異……泣いているのは、真っ先に犠牲になるのは、子供達。大人は子供を守ると言っても、極限状態に追い込まれれば、大事なのは自分の命。残されて怯えているのはいつも子供。だからわたしは、子供達にまず笑ってほしくて、こんなことを始めた」
「European free will medical care mission」
敢えて英語で言ったようである。真由の言にレムリアは頷いた。
何故英語で言ったか。……真由がレムリアのトップシークレットと判断し、麻子に知られたくないと思ったから。
何故麻子に知られたくないのか。レムリアを仲間と捉えたが故に、麻子から離そうとした無意識の情動。
麻子が耳を欹てているのを感じる。英語で言ったことに秘密を感じたのだろう。現状、レムリアの存在は、大黒柱が歪んでいびつに傾いた、“一つ屋根の下”に打ち込まれた楔と言える。そして、それぞれがそれぞれの思惑で、楔の位置や深さをコントロールしようとしている。
ただ、その楔が極めて自立的に、しかも予想外に動くことに、まだ誰も気付いていない。
順番が回ってきた。
(つづく)
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