グッバイ・レッド・ブリック・ロード-44-
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「どうぞ」
のれん越しに、店のおばさんに誘われ、席に陣取る。
4人がけのテーブルに、父と麻子が隣同士。レムリアと真由が隣同士で、父の正面が真由。麻子の正面がレムリア。
メニューを開く。隣近所のテーブルのエビを見るや、かなりのサイズ。
真由は2匹食べると言うが。
「3匹をふたりで分けません?」
レムリアは麻子に提案した。
「え?ええ、いいけど……」
突然声を掛けられ、麻子が目を円くする。ここでレムリアが彼女に話を振った理由は簡単。今ならこの“浮いた”女に、不自然でなく話しかけられるからだ。
現状、この二人に性急な相互理解を迫っても磁石の反発。さりとてどちらか孤立させれば、暴走か爆発のタネ。
誰が正しいとか悪いとか、糾弾して解決する問題ではない。
注文完了。
「不思議な子ね。あなた」
声を掛けられて安堵したか、そして気を良くしたか、目を輝かせて麻子が尋ねた。
「よく言われます。でも普通と言われるよりは印象強い方がいいだろうと自分を慰めてます」
この手のネタには軽く冗談を交ぜ、深刻に感じさせないのがレムリアの流儀。
大体、めたくそにけなされるか、ベタベタに褒められるか、どっちかだからだ。
どっちに話が振れても、回答に困る。
「不思議、本当に不思議。外国の人にはとても見えない」
「恐れ入ります。おかげさまで、ハナから寄ってこないか、深く理解して下さる魂の味方か、私の周囲はそのどっちかです」
レムリアはテーブル下で真由の手を握った。
真由は麻子から視線を外したまま、しかし手は握って返した。雰囲気作りというレムリアの意図を解しているのであろう。
麻子は感心、或いは意外、といったニュアンスの笑みが浮かべた。
「魂の味方!……カッコイイというか、失礼だけどその年齢で飛び出すセリフじゃないみたい」
(つづく)
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