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2010年10月16日 (土)

グッバイ・レッド・ブリック・ロード-46-

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 セリフの内容の割に表情は穏和である。この場の状態を“お喋りが弾んでいる”といった感じで、安堵を持って捉えているようである。
「だってこの子ボランティア団体で世界中飛び回ってるもん」
 真由が応じた。
「へぇ。その歳で……真由とあまり……来た来た」
「お待たせしました」
 父親が言葉をちぎり、相好を崩す。
 見るからに美味そうな、湯気立つエビフライが、次々運ばれてきた。
 

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(本物)
 さんざ待たされて食べたエビフライは、身が大きくてプリプリしている上、油の質も良いのだろう、かなりカロリーは高いはずなのに、ぺろりと平らげてしまった。
「名古屋名物エビフライ、というのは、テレビでタレントが言いふらした結果の誤った認識だ」
 父親が言いながらエビフライの最後の一口をバリっ。なお、こういう席にはアルコールがつきものだが、父親の身体を考慮したレムリアの勧めもあり、控えている。
「しかし、ここまで傑出した味覚的クオリティを有するなら、名物と称しても問題はあるまい。宇都宮や浜松の餃子、各地のラーメンと比しても、ご当地ものと謳うに値する。オリジナリティがないといえばないが、逆に言えばシンプルでベーシックであり、であるがゆえにデファクトスタンダードとなるポテンシャルは充分にある」
 レムリアは父親の論客ぶりに吹き出してしまった。
 なんか、どうしようもなく下らないことを、わざわざ難しい語彙を使って“格調高く”語ってはいまいか。
 そして、これがこの父親の“素のまま”なのだとレムリアは理解した。自分たちのお喋りによって精神的にほぐれたのか、追いつめられて影を潜めていたものが久々に顔を出した。そんなところだろう。
「実はお父さん面白い?」
 レムリアは真由に尋ねた。
 
(つづく)


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