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2010年10月17日 (日)

グッバイ・レッド・ブリック・ロード-47-

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「……こんなキャラだったっけ、って思ってるとこ」
 同様に驚いているのだろう、円い目で真由が応じる。
「看護婦さん」
 急に父親がレムリアを呼んだ。
「はい?はいはい」
「あなた……外国の方だそうだけど、日本のこういう料理って本場と比べてどうだい?」
 日本人が異邦人と話す時、まず食い物の話をするのはそれこそデファクトスタンダードなのか。
「あんまりそういう見方していませんね。これが標準でこれが邪道。自然科学ならともかく、人の感性が関わるもの、人そのものに、正解を与える方程式はないはず、と思っていますから。他と比べて、でなく、単に“自分にとってこのお店のエビフライはおいしい”、で、いいと思いますよ。このお店は多分、この長ぶっといエビさんを、しつこくなく揚げるっていうのが持ち味なのでしょう。私はそれに対して美味しいと言うだけ」
「なるほど」
 父親は爪楊枝をくわえると、腕組みして頷いた。
「感性の関わるものに王道なし、か。……確かにそれならいいってもんでもないよなぁ」
 レムリアは気付いた。
 父親は作品の構想において、思考的にさんざ彷徨った挙げ句、一つの光明として“王道”に乗ってみてはどうかと考えていたのである。
 王道……それは常滑焼きの場合、老師の言った“飾り気のない実用的な”容器・茶器となろうか。
 でも多分、じゃぁそれで行ってみよう、なんてのは単なる惰性であって、意識した、魂の入った行動ではない。当然、作品に魂が宿るとは思えない。
 だったら。
「邪道で王道で……考えていたら肩が凝るし怖くて何も出来ません。天動説地動説のように、立場がひっくり返ることもあります」
 レムリアは言ってみた。学術肌の父親ならこの話題食いついてくれるだろう。
 
(つづく)

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