グッバイ・レッド・ブリック・ロード-49-
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であれば、同年代である真由とて大した差はないだろう。恐らく彼女にとり、麻子は根本的に親代わりにはなれないのだ。だから既成事実を作られても反発を持続できる、むしろ強化できるのである。そして彼女は、麻子の底浅さゆえの物言いが聞くに堪えない。ゆえに我慢を重ねたり、或いは、先ほど帰宅時のように、そもそも発言させないことによって、どうにか自分の怒りの導火線に火を点けないように“しのいで”来たに相違ない。
それが、今この場になって、限界点を越してしまったようだ。
理由は簡単、“真由陣営”である自分に対して、麻子が攻撃を企てた、と感じたからである。
衆目の中沈黙すること少し。
「ひどい……」
麻子は涙を浮かべて鼻をすすった。
同情の目線が集まったところでいきなり立ち上がり、服で引っかけでもしたか、ガッターンと派手な音を立ててイスを倒し、店から走り出す。芝居がかっている気がせぬでもないが、こちらはこちらで、真由に徹底的に否定され続けてきた、という蓄積があるのだろう。
いびつな“一つ屋根の下”は、元の木阿弥、どころか、負に転じてバラバラ。
楔の力で?
「あ、麻……」
父親は立ち上がり追いかけようとし、札入れから1万円札をテーブルに放り出すと、倒れたイスを起こし、走り出した。
風圧で札が動く。その意図は“君たち払っておいてくれ”ということだろう。だが真由はその札を手にしようとしない。
彼女の瞳にも涙。父親の座っていた、イスの方を見たまま。
「お騒がせしました」
レムリアは立ち上がって周囲に頭を下げる。
しぼんでいたお喋りが順次再開する。レムリアは真由の背後に回り、そっと近づき、彼女の肩の上に顎をちょんと載せた。
「今夜」
囁く。
「え?」
「このままフェードアウトしようか」
真由は弾けるような動きで首をひねりレムリアを見た。
(つづく)
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