グッバイ・レッド・ブリック・ロード-51-
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そして、夜遊びという文字通り禁じられた遊びは、真由自身に対しても、涙の理由……それでも父親は麻子が大切なんだという内向きの心理……を、一時的であれ解放する作用を持つであろう。なお当然、レムリアは単なる夜遊びを彼女に提案したわけではない。“自信回復”のための一つの小旅行とするつもりでいる。自信回復の手段は、何も周囲の心理改革を図るだけが唯一ではないからだ。
「でもどこへ?ヘタにうろつくと補導されるし、近いと見つかるぜ」
真由は訊いた。
レムリアは小悪魔の笑みを浮かべて。
「この空港施設にいる分には疑われないでしょう。お父様だってああ二人で遊んでるな、位にしか思わない」
「それだけ?」
レムリアは首を横に振って。
「迎えに来てもらいます」
「え?……ああ、東京の人呼びつけるの?」
「それは秘密」
レムリアは舌をぺろっと出して立ち上がった。
「夜遊び、行こ」
「うはは、いい響きだな、夜遊び。禁断のオトナの世界、ってか?」
「あはは」
二人は遊んだ。
空港ビルのショッピングモールで買い物をし、ケーキを食べ。
屋外の見学デッキで夜空に舞い上がり舞い降りる飛行機を眺め。
そして、ビルの奥にある展示スペースに向かうと、秋口まで開かれていた、環境だの自然だのテーマとした国際博覧会の回顧展。
写真パネルがぐるりと並び、中央に設置された“受付カウンター”の中では、博覧会の目玉の一つ、女性アンドロイド型ロボットが、コンシェルジュ風に丁寧に一礼。
「結局これ行かなかったもんな」
パネル写真を見ながら真由がぽつんと呟いた。
見て歩く。そこでレムリアはある可能性に気が付いた。が、まぁその時はその時だ。
程なく可能性は現実になった。
「え?あれ、これってお前……」
(つづく)
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