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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-56-

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 出入り口部分に蛍光色の明かりが灯る。
 人影が二人。
 ひとりは白いローブに身を包んだ、長い髪の女性である。背が高く、一見して国籍不明であり、古代世界の謎の王女、とでも記した方が似合うようだ。
 他方、もうひとりは、黒檀の肌をした見上げるような大きな男。ダークグリーンの軍服とおぼしき制服を纏い、眼球部の白さが月明かりに際立つ。
「こちらが、今夜のお客様ね」
 天空で奏でられるハープ、そんなイメージのソフトな声が女性から発せられた。
「はい。友達の真由ちゃんです」
 レムリアは言った。
「わたくしたちの船へようこそ。わたくしは副長の“セレネ”。コールサインでごめんなさい」
 セレネと名乗ったその女性は胸に手を当て軽く会釈した。
「あ、ああ、はい。あの」
 真由はしどろもどろでどうにか自己紹介。
 男性の方が一歩進み出る。
「私がこの船を預かる船長、コールサイン“アルフォンスス”だ」
 ラジオの深夜放送向き、とでも書こうか、重心の低い、渋みのある声で男性アルフォンススが言い、真由の2倍はあろうかという大きな手のひらを差し出した。
「あ、……どうも」
 真由がためらいがちに手を差し出すと、覆うように包み込まれ、ハッとした表情。
 その、少し頬を染めた横顔に、
「あなたと、見たいものがあったから」
 レムリアは、言った。
「私……と?」
「しし座流星群。今夜これから何万という流れ星が飛び交うんだって。それをこれに乗って夜通し眺めようって算段」
 レムリアは言った。真由は目を剥き、
「流れ星が何万?」
「そう」
 レムリアは頷いた。電車の電光ニュースで流れる辺り、稀代の天体ショーとしてテレビ新聞で結構取り上げられてる、という印象だが、彼女の反応はそんなの初耳、という様子。……まぁ、あんな心理状態で流れ星、以前にテレビ新聞でもないであろうが。
 
(つづく)

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