グッバイ・レッド・ブリック・ロード-62-
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「PSC(ぴーえすしー)を使いますか?」
セレネが耳栓様の小さな機械を2個出し、レムリアに訊いた。PSCとは意識で直接船をコントロールするシステム。Psychology-direct-reflection Synchronization Control-unit。心理同期制御とでも訳すか。
レムリアはその機械を手に取り、一つを自分の耳に押し込み、
「いえ、通常ルーチンで。私たちは甲板にいます。INS(いんす)のシールドをタイプ2で」
「了解しました。真由さん、素敵な夜空の旅を」
セレネが言い、二人に背を向け、アルフォンススと共に船尾方へ去る。INSとはInertia Neutralization System。慣性力中和装置。つまり、クルマや列車が急加速・減速を行った時に身体が受ける、あのぐらっとよろける力“G”を相殺する。原理と仕組みは略す。
「本当に映画みたい」
SF用語を当たり前のように交わす二人のやりとりに真由は瞠目した。
「しょっちゅう乗ってるとハリウッドの特撮なんかチャチだよ。はいこれ耳に。無線通信機にもなってるから。こちらへどうぞ」
レムリアは真由の手を取り船首方向へ招き、通路を開き、階段を数段昇って甲板へ出た。
一見すると古風な帆船である。しかし木製に見える板材は“カーボンナノチューブ”である。また、帆柱に折りたたまれた帆の如き、しかし工業製品を思わせる白い板の正体は、恒星からの粒子流を受け推力とする補助動力機関ソーラーセイルである。つまりこの船は恒星からの風を受け、星の海を行く。
その星の海を真由が見上げる。
「……嘘みたい」
「レムリアです。甲板へ出ました。準備OKです。発進願います」
(つづく)
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