グッバイ・レッド・ブリック・ロード-70-
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「帆を動かすから気を付けて」
レムリアの声に、真由が我に帰ったように、身をびくりと震わせる。既に船の持つ3本のマストの中央、もっとも大きなセイルが展開され白い膜状になっている。次いで、マストがその根元から左舷方向へ向かってがくんと折れ曲がり、水平に倒れる。
帆膜が水平に広げられた。言うまでもあるまい。この膜をトランポリンのように使って、イルカが運んでくるであろう女性を受け止めようというのだ。
イヤホンがピンと小さな音を立てる。
「ソナー感、来るぞ」
間近で聞こえた男の声に真由が振り向く。
立っていたのは北欧系とおぼしき金髪碧眼の見上げるような大男が二人。タンクトップ姿で筋骨隆々。しかも間に鏡を立てたかのように二人はうり二つ。
……救助活動に際し、体力及び戦闘を要す場合に彼らの存在は欠かせない。双子の兄弟活動員、コールサインは“アリスタルコス”“ラングレヌス”。
「了解」
レムリアが答えて程なく。
先ほどのイルカがざぁっと水しぶきを上げ、再び空中に躍り出た。
その背びれの位置に載せられた、ぐったりした人の姿。
確かに女性である。茶色っぽいワンピースの水着をまとい、首や腕にはアクセサリーの類が沢山。
イルカは“予告”通り、船の上を横切るように飛ぶ。
飛びながら身体をねじり、くるりと一回転。
反転し、上下逆さまとなったイルカの背から人体が滑り落ちる。
人体を帆膜でキャッチする。イルカは尾びれをパタパタしながら、そのまま船を飛び越え、水中へダイブ。
「ありがとう!」
レムリアは日本語でそう言った。意志さえ伝われば言語自体はどうでもいいからである。イルカは少し離れたところでジャンプして宙返りし、水中に姿を消した。
(つづく)
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