グッバイ・レッド・ブリック・ロード-80-
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現れる、小型の太陽を思わせる白い光跡。
まるで天が与えた照明弾である。まばゆい輝きが東方より出現し、一帯を照らしながら西へ流れる。
超高輝度の流星。火球(かきゅう)。
その文字通り火の玉が照らした状況に、甲板の二人は目を瞠った。
それは男達が数名、乳飲み子を抱いた母に群がっているという状況。
それだけで異常な光景であるが。
その男達は、その乳飲み子抱いた母の腕を無理矢理押し広げ、
乳飲み子を奪い、
泣き喚くその乳飲み子を、
大地に放り出した。
「いやっ!」
叫んだのは、甲板にいる少女二人、そのどちらであろうか。或いは二人ともであったか。
二人は甲板を駆け出す。操舵室が気付いたか、併せて船体が高度を下げ、右舷を下げて傾く。
二人は甲板を蹴り、暴風と共に赤砂の大地に飛び降りる。
現場まではやや遠い。離着陸の暴風が及ぶ範囲を考慮して距離を取っているせいだ。
走る。
「(月女神よ天の光途切れさせることなく)」
レムリアは指を振るう。
そのマジカルなタクトに呼応するように、ドッとばかり流星が流れ始める。さながら夏の豪雨の如く、流星が数限りなく天の一点より四方へと放たれ始め流れ出し、月灯り程度に大地がほのかに照らし出される。
無数の流星が全天蓋を覆い尽くす驚異的な流星嵐(メテオストーム)と化す。それはさながら地球という船が、星の海の中今まさに進んでいるが如くだ。同様の流星嵐は1799年、海流に名を残すフンボルトが観測しているほか、1833年アメリカで記録され、“世界が火事だ”と人々が逃げまどったとされる。
(1833年のしし座流星群の模様を伝える当時の新聞版画)
さすがに鳥肌立つ超絶レベルの現象であり、二人とも……走りながら……思わず天を仰ぐ。
「これもあなたの……魔法?」
(つづく)
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