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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-81-

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「かも知れないけど判らない。天の采配かも。ただ、天文学の記録には、歴史的現象の再来と書かれ、メカニズムはダストトレイルに地球が、と説明されると思うけどね。ともあれこれはチャンス。悪いけどまた手伝って」
「もちろん」
 二人は天の照明を頼りに擾乱を追う。拉致に躊躇ない粗暴の集団を、特段武道をしているでもない少女達が一心に追いかける。しかも抱いて当然であろう恐怖を思わせる語は口にしない。恐怖の元凶である、彼我の差違比較すら許さぬ衝動が、二人を突き動かしている。
 それは恐らく、二人の持つ女性原理……庇護本能の発露以外の何物でもあるまい。今、男達は乳飲み子を放置のまま、母親の方を引きずり、抱え上げて連れ去ろうとしている。彼らは抵抗する母なる人の上半身に手を伸ばし、平手打ちを繰り返し、纏っていた布を引き裂く。
 乳房が露わ。
 その様子に真由が唇を噛む。
「あなたが思っているのとは違う」
 レムリアは真由に対して言った。男が女を連れ去る理由は大抵、一つであるが。
「むしろそれよりひどいかも知れない。あの男達の目的は……あのお母さんのお乳、母乳」
「は!?」
「食べる代わりに飲ませろというわけ。飢餓と貧困は人をただの獣に変えてしまう」
「そんな……」
「信じられないかも知れないけどそれが現実。しかも、男性達は襲ったゲリラの方じゃない、援助を受けた側の同じ部族。支援食料が焼かれた。じゃぁ、ってわけ……真由ちゃんは赤ちゃんを!救ったら船まで全速力で戻って!」
 レムリアは母に進路を取った。真由はレムリアが指差す方へ向きを変えた。
「判った」
「お願い!……ラング!掃討はまだ終わらない!?船を回して欲しいんだけど」
 レムリアは言いつつ振り返り、真由が乳飲み子を抱き上げるのを確認してから、男達に視線を戻した。
 
(つづく)

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