グッバイ・レッド・ブリック・ロード-82-
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男共と目線が合う。次いで拉致される母なる人に目を向ける。すると母なる人は、……レムリアの超常の視覚が捉えたのだが……その瞳に、真由に抱かれる我が子の姿を見たようで、意志の糸ふつりと切れたかのように失神し、我が子に向け伸ばしていた両の手を、その腕を、だらりと垂らした。
その所作に男達は薄笑みを浮かべる。次いで追いすがるレムリアをチラチラ見ながら逃走の足を早める。ただ、その目線は自分の走る速さを推し量るというより、値踏みしている、という印象。
レムリアは己が身の内に、にわかに沸き上がる怒りの感情を意識した。友が傍らに、という抑止力が外れた故であろうか、いかに飢餓のゆえとはいえ、この逃げる者共のなす卑劣は、それ以下はないと断言出来る、文字通り最低レベル。
今この手に、船長達が持っているであろう超銃が、今この手にあったならば、その銃口を躊躇無く向けた自分の可能性を否定しない。
否。我を顧みよ。
「(意図したこと形をなさず)」
レムリアは内なる扇動をも御する意を込め、呪文を呟き、指を自らの唇に当て、次いでその指を走り去る卑劣の団へと振り向ける。
次の瞬間。
最前の火球をも上回る、炎天の太陽も斯くやと思われる光の塊が東から西へと突っ走る。
それは頭上を通過する際、文字通り爆発して幾多の光に分裂した。そのビジュアル的動きに同期し、電気のショートを間近に聞くような、バチンという鋭い破裂音が頭の中に響き聴覚を圧し、その異常性ゆえか、男達が叫び声を上げ、担いでいた女性を放り出す。
流星現象の一つ爆鳴火球(ばくめいかきゅう)……と、レムリアは後に東京から聞いた。
「ドクター!船体を割り込ませて透過シールド!」
レムリアが依頼したその直接的内容は、男達と、放り出されて横たわる女性との間に、船体を置くという動作。
(つづく)
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