« グッバイ・レッド・ブリック・ロード-82- | トップページ | グッバイ・レッド・ブリック・ロード-84- »

グッバイ・レッド・ブリック・ロード-83-

←前へ次へ→
 
 船が動き、レムリアの指示通り、男達と女性との間に、風と共に降り立つ。
 但し船の姿は一切見えない。このため、男達の視覚には、流星のなす明かりの中、落とした女性の姿が暴風と共に消えて行くように見えたはずである。
 透過シールド。一部読者にあっては“光学迷彩”と記した方が判り良いかも知れぬ。船体が無ければ見えるはずの風景を作り出して見せ、船自体の姿をカモフラージュするもの。最前、戦闘時に“視認できない”と書いたのもこれによる。
 レムリアは横たわった女性を抱き上げた。恐怖が流した涙の跡に砂粒が付いている。まずその砂粒が目に入るのを防ぐため、いかにも平和そうな丸っこい字で“マキロン”と書かれた日本の消毒薬を軽く脱脂綿に噴き、目元の砂を拭き払う。
 次いで身体を見回すと、まず腕を骨折している。後で処置することとし、先ほど男達に引き裂かれたせいもあろう、尚更衣服とは言えないような、身に纏ったその布で、あらわな胸を覆い隠す。ただ、飢餓地帯の如実さ、と言えるか、その男どもが目を付けた乳房ですら、ふくよかな形状とはとても言い難い。骨折も、線のように細い体躯からするに、カルシウム不足が背景にあるとわざわざ考えるまでもない。『華奢だ』と東京が評する自分の体躯より尚細い。だいたいその華奢な自分がこうして苦もなく抱けるではないか。
 なのに母なのだ。レムリアは思わず自分の胸元に視点を移した。14歳という自分の年齢。在地欧州や、夏の湘南に見た同年代の日本の少女達。
 大人びた彼女たちとの差違に覚えた、焦りとコンプレックスが贅沢で低レベルに感じられる。恥ずかしい気持ちが目に作用して何かこみ上げさせようとする。
 上を向いて耐える。涙の代わりに光り流れる星の滴。
 
(つづく)

|

« グッバイ・レッド・ブリック・ロード-82- | トップページ | グッバイ・レッド・ブリック・ロード-84- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: グッバイ・レッド・ブリック・ロード-83-:

« グッバイ・レッド・ブリック・ロード-82- | トップページ | グッバイ・レッド・ブリック・ロード-84- »