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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-88-

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 心拍安定を確認してレムリアは甲板へ戻る。真由を先に甲板に帰していたが、トラブルが生じたことは無線を通じて把握していたようだ。果たして彼女は甲板に立ったまま、心配そうな目でレムリアを迎えた。
「大丈夫、母子共に安定」
 レムリアはまず、笑顔で真由にそう言った。
「そう」
 真由はまずは小さな笑みを浮かべて応じた。
 船が再びの夜空へ飛び立つ。
 真由は遠ざかる医療センターを見ると、ふぅーっと声に出してため息をつきながら、甲板床面にぺたんと座り込んだ。
「良かった……」
 呟き、茫然と床面に目を向け、まばたきもしない。その目に流星が幾多煌めきを映して流れる。だが、彼女の瞳は流星に、別の何かに、焦点を合わせているわけではない。
 放心状態。
 それは、この短時間で生じた膨大な、しかもことごとく衝撃的な出来事の数々が、彼女にとり、いかに激甚な心理的ショックであったかの証。
 フラッシュバックが生じているかも知れないとレムリアは思う。すなわち、真由の意識の中で、そうした個々の出来事を象徴する数々の映像、ワンシーンの集合体が、奔流のように、流れ巡っているのではないかということ。
 フラッシュバック。その映像は、往々にして、その1枚1枚が、心に刻み込まれた1つ1つの傷に対応している。だとしたら、自分は、今夜彼女を引っ張り出した挙げ句、映像の数だけ、彼女を傷つけてしまったのかも知れない。それは申し訳ないと率直に思う。ただ、確信として持っているのは、その傷は時の作用で確実に癒されるタイプの物であり、後々彼女を大きく変える原動力になるであろう、ということ。
 その根拠は。
 自分自身。
「赤ちゃん、ありがとうね」
 レムリアは言った。
「へ……?」
 真由がゆっくりレムリアを振り仰ぐ。
 
(つづく)

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