グッバイ・レッド・ブリック・ロード-90-
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というのも真由のセリフ、直接的には、彼我の被害の程度を比較し、彼らの方が自分よりも傷ついてると感じた……という意味であろう。但しそれは、“いじめなど、訴えるようなレベルの被害ではない”と言っているわけではない。むしろ、相似した卑劣行為だからこそ、比較が成立した結果である。レムリアが着目したのはこの“比較”だ。真由が、自分という存在を、客観的に捉えることが出来はじめた、と考えられるのだ。ただ、その比較対象とした事象は、その極北ではあったが。
すると。
「みみっちいね」
真由は言い、涙だらけの顔で、薄笑みさえ浮かべてレムリアを見た。
その意図をレムリアは一瞬判じかねたが。
「出来る範囲で、つーか、ばれない範囲で、隠すとか、壊すとか。一度可愛いラッピングで猫の死体が入ってたけど。確かにここで見た事は卑怯だと思った。でも、生きるための必死が生み出した卑怯なんだとも判った。……でもあの4人って“ただ下らないだけ”じゃん。ああ、なんかあいつらが可哀想なくらい子供じみた存在に見えてきた」
真由の涙だらけの笑みは、レムリアには失笑と感じられた。
だから、
「所詮、そんなことしかできない連中。ってこと」
と言った。ここまで聞いた限り、真由は彼女自身もそうだし、同様にいじめる側の程度についても、客観視できたのだろう。
ところが。
「でも、ここの人たちは、そこまで虐げられて、それでも頑張ってるのに、私と来たら、そんな下らないヤツにさえ……」
真由はこう続けた。それは違う、レムリアは言おうとして声にしなかった。今の彼女は自虐的、と書いていいだろう。そんな心の誤謬を軌道修正するのに、否定語は良くない。彼女を認めない、ということになってしまう。
(つづく)
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