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2010年11月30日 (火)

総武快速passing love ~市川~

~市川~
 
月曜日。
下りの通勤快速はフルスピードで通過して行く。
疲れた帰路の人々を乗せて。
止まっている一本前を追い抜いて。
明滅しながら流れゆくネオンのような窓ガラスに。
あなただけ見えたような気がしたのは偶然か。
翌日火曜日。僕は抜かれる側の列車に乗った。グリーン車が2階建てだから、どの辺に見えたか見当は付けられる。
ただ、混んでる車内を動けはしない。
車体に4つあるドア、毎日違うドアに乗ってみる。
火曜日のドア、水曜日のドア、木曜そして金曜日のドア。
あなたの姿は見えなかった。
アナウンスが流れ、程なく通勤快速が隣の線路を通過して行く。
明滅しながら流れゆくネオンのような窓ガラスに。
え?いや、それは幻。そう、あり得るはずがない。
土曜日のグリーン車は平日通勤と異なる客層。おばさん達の話し声、お菓子の包みを開く音。
切符の確認に来たアテンダントが怪訝な顔。
僕が座る隣の席は花束だから。溢れるほどの花束だから。
2枚のグリーン券をチェックして、アテンダントは小さく一言。
「こちら、お水お持ちしましょうか……少々、水分不足のようですよ」
総武快速で終点近くへ。
君が眠る、あの丘へ向かって。
 
←船橋新小岩→

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