グッバイ・レッド・ブリック・ロード-106-
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導入が長くなったので本文に戻る。そして今、二人が練っているのは、いささか洒落じみているが、父親の作品製作に用いる陶土である。
「私なら大丈夫だから。レムリアいてくれるし。気にしないで茶碗作りなよ。父さんの本気モード、かっこいいんだってね。見たいよ」
レムリアの言葉を借りれば、“魂の牢獄“から解放された真由には、自分が父親の作陶を邪魔している、と感じられたようである。それは重ねて書かずとも彼女の本意ではなく、結果、この発言に繋がった。
そして、真由の言葉は、とりもなおさず、父親にとって……待ちに待った……と書いてよいのだろうか、“言葉の許可証”となった。
結果、真由以上に解放されたのは実は父親の方だったのかも知れぬ。娘からの “本気モード”というフレーズに、突如思い浮かんだという。夜通し娘を求め彷徨い、夜明けに達するまで見続けたあの数多の流星にインスパイアされ、作品のイメージが思い浮かんだというのだ。いささか長くなるがついでに書くと、これは思い詰めていたことを全く忘れ、別のことをしているうちに、思い詰める……散々思慮をめぐらせる……の結果が脳内で整理され、一つの答えを導いた、と言える。そして、“言葉の許可証”により、抑圧されていた創作意欲が解放され、父親を突き動かしたのだ、と言えるだろう。なお、“本気モード”は、麻子が父親になびくきっかけになった後ろ姿なのだとか。実は父親は、夫婦仲が悪くなり始めた時点で、“多感な時期だからこそ隠し事して傷つけたくない”と、真由を麻子に引き合わせている。その際、麻子が真由に話したカッコイイ父親というのが、真剣に取り組む姿……“本気モード”である。ここで、真由が麻子の言葉を抵抗無く引用していることに注意すべきであろう。
(つづく)
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