グッバイ・レッド・ブリック・ロード-109-
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「はい……」
「その……君たち夜遊びから帰ってきてから、真由が『あたしって幸せなんだ』って呟くんだが……君たちはあの晩どこへ行ってきたんだ?」
「流れ星見てきただけですよ」
「じゃぁ真由の言った勉強ってのは天文学かい?」
「……女の秘密じゃだめですか?」
「できればね。なんかこう、考え込んでいるように見える。……ありゃ“思慮深い大人の女”の顔だ」
父親がそこで薪を投入すると、中でバチンと大きな音がし、舞い上がった灰が、一部炊き口から逆流した。
慌てて炊き口の鉄蓋を閉じる。
「やがて……」
レムリアは言い、西の空を見た。
空港から舞い上がるジェットライナー。
「……彼女の学んだ内容の“終了証”が届くでしょう」
「ほう?」
意表を突かれた、という顔で、父親はレムリアを見上げ、
次いで何かに気付いたように視線を少しずらし、その表情を険しくした。
レムリアは父親の目線を追い、振り返る。
自分の目線も険しくなるのが自分で判る。工房入口にスーツ姿の男が二名。
方やグレーのスーツに身を包んだ若いメガネの男、こなた、紺の三つ揃いに白髪頭で、顔のシワが目立つかなり年配の男。
二人は歩いて来、方や中学の担任と言い、こなた学年主任だと告げた。
学年主任が真由の父親であるかと問う。なおこの間、彼らはレムリアに一瞥を寄越しただけ。
「そうですが何か」
父親は二人を見ず、窯を向いたまま応じた。
「本日真由さんは……」
メガネの担任が問う。但し、その目は心配というより弾劾・糾弾のそれ。
「行くと傷つけられるので行かせません」
父親は言い、薪を一本。
「お休み……」
「ではない。あなたは、自分の子供が学校に行くと酷い目に遭わされるというのに、行けと言うか?」
(つづく)
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