グッバイ・レッド・ブリック・ロード-111-
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すると担任は、
「僕のクラスは生徒の自立性を尊重……」
「場合によりけりと違うんですか?積極的な子もいれば繊細で引っ込み思案な子もいる。ましてや彼女は転入生。周りは知らない子ばかり。私には、先生の行為は、“空気読んで勝手にやってね”と突き放しているようにしか思えません。失礼ながら」
「そんな保育園や幼稚園じゃあるまいし。手取り足取り……」
レムリアは舌打ちした。
「なんでそう極端なモノ言いになるんですか?面倒見のいい子に生活ルールのアシストを指名するとか、幾らでも手はあるでしょう。それともあれですか?自分のクラスに転校生溶け込ます算段を思いつかないとか」
プライドをくすぐってやる。オトナってのは、子どもから痛いところ突かれると本性を現すもんだ。
と、わざとらしい咳払いが傍らより一つ。
「君、それは幾らなんでも失礼……」
これは学年主任。レムリアはその視線を瞳で受け、
「失礼?孤立した生徒の存在からいじめの可能性を思いつかないような人間に教師面しないでいただきたい。無視と、伴う孤立はいじめの典型だ。私がわざわざ言うことか」
真っ直ぐ見返して言ってやる。“姫様の威厳”という奴を態度表情に表す術くらいは心得ている。
「いじめ……?」
教員二人が顔を見合わせた理由を、レムリアは最初見抜けなかった。
「君、それは証拠があって言っているのかね?」
「いじめがあるなんて軽々に口にするもんじゃないよ」
開いた口がふさがらない。だったら、この者共は父親の発言……“傷つけられている”を、書き出したリストを、なんだと受け取ったのだろう。
その父親がボソッと言った。
「いじめ、と認めたくないんだろ。査定が下がるから。この手で自殺に発展した時の学校側の会見ってヤツを見たことがあるかい?トラブル、行き違い、誤解、やれるだけのことはした。そういう言い回しはするが、いじめ、とは絶対に口にしようとしないんだ」
(つづく)
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