グッバイ・レッド・ブリック・ロード-113-
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「あの……」
主任が口を挟もうとするが間を与えない。
「証拠と言ったな。ではこちらで証拠を見つけるがよろしいか。人権侵害であり傷害事件であり窃盗であり器物損壊だ。救済の申し立てをするし警察に告発する。警察と司直による本格的な捜査を依頼することになる」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「なにを待てと?あなた方が何もしないなら、私たちは私たちの出来る全てで動くだけ。学校のことだからまずは先生……と思った我々がアホでした。あと勝手にやります。どうぞお引き取り下さい」
「話を聞いてくださいよ」
ヒートアップするレムリアの舌鋒に対し、懇願するように担任が言った。
ちなみにレムリアの“口撃”は全部“事前の打ち合わせ”による。具体的には。
「……軽い気持ちでヘラヘラした態度で来るようでしたら、深刻で本気であることを判らせ、慌てさせる必要があります」
「それでも反応がなかったら?」
「実際動きましょう。行動で示すだけの話です。……ガッコーのセンコーってのは権威権力に弱い。コレ定説ですから」
話に戻る。
「何の話ですか?」
レムリアは問うた。担任は“予想外の困惑”のなせる技であろう、眉が“ヘ”の字。
「その……真由さんが被害を訴えられていることは判りました。で、でもですね。それだけじゃ我々もどう動いていいものか。やはり確実に、そういうことが起きているという確証がないと……」
「警察みたいな真似は、できないのですよ。生徒を疑うことになる」
担任の言葉に学年主任が補足した。
……少し、満足げに見える表情で。
全国一般地方に寄らず、これが学校側の普遍的なスタンスとして考えたほうがいいだろう。たまたま、今回ひとつ露呈され、場所が常滑だっただけの話だ。
いじめが“ある”と困るので、存在を隠し、否定しようとするのだ。
そのための屁理屈小理屈なら、打ち出の小槌のように幾らでも出てくる。“いじめ”に定義を設けるなどその典型だろう。子供が傷つくという肝心な視点はどこにもない。
そしてその隠す行為は、他でもないいじめを更に助長することになる。
(たやすく実例が見つかり、しかも枚挙にいとまがないという愚かしさ)
(つづく)
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